金融不安からの脱却

　「銀行なら間違いない」。愛知県の短大に進み、地元就職を考えていて、金沢に本店のあった石川銀行の求人に目が止まった。２０年以上も前のこと、世の中はバブルに向かっていた。三つの支店で窓口を担当した。笑顔の作り方、接客マナーと地域経済を支える窓口業務の研修は厳しかったが、元気のいい大きな声と笑顔を慕ってくれる客も多かった。

　「破たん」は突然訪れた。想像などしたこともなかった。支店は、入りきれないほどの客であふれ、早朝から出社して応対に追われた。「息つく暇もなかった」。翌日の朝に帰宅、シャワーを浴びるとまた、すぐ支店に戻った。

　２００１年暮れに経営破たんした石川銀行は、０３年３月２０日にすべての営業に幕を下ろした。９０年代後半から北海道拓殖銀行、山一証券などが次々に破たんし、日本の金融システムを揺るがした「金融危機」の波は地方経済にも押し寄せた。石川銀行が営業を終了して５年。荒海に投げ出された行員たちは、再就職、独立、資格開業と、それぞれの道で、もがきながらも足を踏ん張って生きる。

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